再会、そして

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再会、そして

 「父、さん……?」  アスカの震える声に、全員が目を見開く。  「……ずっと、会いたかった」  穏やかな声で言いながら、貴斗が口の端を歪める。歪な笑みを浮かべた光のない目で見つめられ、アスカは寒気を感じ身を固くした。  「お前を迎えに来たんだ。さあ、一緒に来い」  貴斗の伸ばした腕を遮ろうとシオンが飛び出す。貴斗は伸ばしていた腕を振るい、シオンの体に強烈な手刀を叩きこんだ。地面を転がるシオンを冷たく見下ろし、掲げた右手に黒いオーラが集まっていく。  「邪魔をするな」  黒いオーラが弾けた瞬間、シオンたちの体から黒い鎖のようなものが伸びて全身を絡め取った。貴斗の背後を突こうと飛びかかっていたクレイとミルが地面に叩きつけられ、手に集っていた光が消えていく。  「ぐっ……!?」  「力が馴染めば、貴様らの意思など簡単に奪えるのだがな」  感情のない淡々とした言葉に、アスカはぞっとする。条件が整えば、シオンたちの心を支配できると、貴斗はそう言ったのだ。  アスカの大切な仲間たちを、貴斗は人とすら思っていない。そのことを目の前で見せつけられ、  「アスカ」  名を呼ばれ、アスカは硬直する。昔から父のことは苦手だったが、目の前にいる父を見れば見るほど、今まで感じたことのない感情が湧き上がってくる。  苦手だとか、鬱陶しいとか、そんな生易しいものではない。顔も声も、言動も、どう見ても父そのものだ。なのに、まるで人の形をした、人ではない何かと向き合っている気がして仕方ない。  「どうした、早く来い」  貴斗の口調が、アスカのよく知る高圧的なものに変わる。なかなか言うことを聞かないアスカにしびれを切らしたのか、一歩また一歩と大股で距離を詰めてくる。  どくん、とアスカの心臓が大きく脈を打った。  貴斗は、怒っている。怒る貴斗の言うことを聞かなければ、どんな目に遭うかをアスカはよく知っている。  貴斗は母とは違い、頻繁に怒るわけではない。だが、ひとたび怒りだせば母以上に手がつけられなくなる。    小学校に入る前、お菓子が欲しいとごねたアスカを貴斗は叩き、罵った。腕を掴んで無理矢理店から連れ出された時の、痛みと恐怖が鮮明に甦る。  思い出せば思い出すほど、体が貴斗のほうへ傾いていく。  行かなければ、また痛い思いをする。今度は何をされるか分からない。  一度は下げた足を、地面から離す。見えない糸に引かれるように、その足を前へ進めようとした時。    「行っちゃ、駄目だ」  震える手に足首を掴まれ、アスカは動きを止める。足元に目を落としたアスカの目に、苦痛に歪むシオンの顔が映る。  「邪魔をするなと言ったはずだ」  冷たく言いながら、貴斗がシオンに手を向ける。見えない糸に強く引っ張られたように、シオンの手が強引にアスカから引き剥がされ、地面に強く叩きつけられた。  「ぐっ、ぅ……!?」  「ふん、随分としぶといな。王の力なら容易く壊せると思ったんだが」  貴斗が指を曲げると、シオンの体が小刻みに痙攣し始めた。懸命に身を捩っても、まるで地面に縫い付けられたかのように指一本すらまともに動かない。  「アスカ、逃げ……」  「終わりだ」  貴斗が指に力を込める。シオンたちに巻きつく鎖が、徐々に締めつける力を増していき――
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