第四章 鋼の魔女と黄昏の王

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 どくん、と心臓が脈打ち、アスカの意識は覚醒した。  (今のは何? 夢?)  額に手を当て、アスカは気持ちを落ち着かせる。深呼吸を二回ほどして、足の先にある物体へ恐る恐る目を向ける。所々が錆びついた、飛行機のおもちゃがそこにあった。  「それ、さっきの……」  いつの間にか起きていたらしいシオンが呟く。何故かは分からないが、シオンもアスカと同じ夢を見ていたらしい。  アスカは飛行機のおもちゃを両手で持ち上げる。あちこちに細かな傷があり、翼の部分は大きく凹んでしまっていた。  だが、ほとんど汚れていない。中古品ながら、それなりに大切にされてきたであろうことが窺えた。  「……同じ、だったんだ」  乾いた笑い声を漏らし、アスカは飛行機を胸に抱く。  子どもの頃に欲しくても買って貰えなかったものを、大人になってから手元に置いた。穴だらけだった少年時代の、穴埋めをするように。  だが、そんなことをしても失われた時間は戻らない。  人生とは、やり直しのきかない一度きりのもの。ほんの一部でも奪うことは、たとえ家族でも決して許されるはずがない。   「同じだったなら、分かるはずでしょ? どうして理解してくれなかったの……!?」  悲しさと怒りが入り乱れ、頭の中がぐちゃぐちゃになる。飛行機を地面に叩きつけたくなったのを、アスカは既の所で堪え唇を噛んだ。
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