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決別の刃
しばらく休むと、シオンは動き回れる程度には回復した。アスカはもう少し休むよう言ったが、完全回復を待っている余裕はないというシオンの意見に従い先へ進むことにした。
広間を出て、果てしなく続く長い廊下を歩く。両側の壁に取り付けられた照明を除けば、明かりと呼べるものは何一つない。
シオンが先頭に立ち、長い廊下をひたすら歩いた。二人の靴が床を叩く音が、遥か遠くにまで反響している。
しばらく進むと、二人の前に大きな扉が現れた。家よりも高く分厚い扉に、アスカは思わず息を呑む。
触れてもいないのに、扉が軋む。地響きのような音を響かせながら、ゆっくりと内側に開いていく。
扉の先には、広大な広間があった。
おそらく、体育館ほどはあるだろうとアスカは思う。崩れた天井から淡い光が漏れて、部屋をかろうじて照らしている。
暗い部屋の奥に、巨大な影が見えた。細い腕をだらりと垂らし、眠っているようにも見える異形の存在。
アスカはごくりと唾を呑む。
かつてアスカの母だったという、鋼の魔女がそこにはいた。
「母さん……」
扉を潜り、アスカは恐る恐る呼びかける。廃墟に打ち捨てられたロボットのように、魔女は指一本動かそうとしない。
実の親だと知った今では、動かないと少なからず不安になる。一歩ずつ近づいていき、部屋の中心に辿り着こうとした瞬間。
「危ない!!」
シオンに押し倒され、アスカは床を転がった。頭上を眩い光が駆け抜けていき、遠くで爆発音が響き渡る。離れた位置で柱が赤熱し、どろりと溶けていくのが目に入り、アスカは戦慄する。
「外に出るんだ!」
アスカを扉のほうへ突き飛ばし、シオンは大剣を生み出して魔女を睨む。目の前に迫っていた巨大な火球を大剣の一閃でかき消し、ブーメランのように飛来した杖を受け止めた。耳を突き破らんばかりの衝突音に、アスカは思わず耳を塞ぐ。
「くっ!?」
シオンの体が吹き飛ばされ、杖が魔女のもとへ戻っていく。魔女は杖を受け止めると間髪入れずに振り回し、二本の光線をシオンに向けて発射した。
シオンは壁を蹴って下に飛ぶ。光線がシオンの頭をかすめ、髪と肩を黒く焼き焦がす。
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