決別の刃

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 ――幼馴染の男の子が、男子の間で流行っているゲームで遊んでいた。楽しそうな顔を見て、自分もやってみたいと思った。  男の子は仲間が増えると思ったのか、喜んで遊び方を教えてくれた。  どうすれば有利に戦えるか、どんなカードが強いのか。教えてもらうたびに少しずつ上達していくのが嬉しくて、楽しかった。  「あいつ、女のくせにこれやってるんだって」  数日後の朝、少女は男子に囲まれ笑いものにされた。男子の手にはつい先日遊んだ、ゲームのキャラクターが描かれたクリアファイルがあった。ゲームで遊んだだけでどうして笑われるのか、少女には理解できなかった。  ゲームを教えてくれた男の子も、標的にされた。彼がゲームだけでなく、リボンやフリルを用いた小物を好んでいることを、少女はこの時に初めて知った。  しばらくして、男の子は学校に来なくなった。  同級生だけでなく、保護者や教師にも男の子を悪く言う人がいたことに少女は驚いた。  その中には、自分の両親もいた。男の子を「気持ち悪い」と蔑む両親を見て、少女は思った。  ――女の子らしくしなくちゃ、と。  少女は男子が着るような、格好いい服が好きだった。だがそのような服を買おうとするたび、両親は「もっと女の子らしいものにしなさい」と買ってくれなかった。  女として生まれたら、かわいいものを愛さなければならない。そうしなければ、あの男の子のように群れから排除されてしまうのだ。  翌年、男の子は転校していった。少女は自分を封じ、周囲が言う女の子を演じ続けた。  時が経ち、少女は大人になった。  大人になったら、格好いい服をたくさん着ようと思っていた。回りの目なんて気にせず、好きなものに囲まれたいと思っていた。  なのに、娘はピンクのワンピースを欲しがった。学校でも外で遊ばず、一人で本ばかり読んでいると聞いた。  娘は、生まれついての女の子だった。  子どもの頃、自分がやめろと言われたことを平然とする。自分を縛り続けたものを、目の前に持ち込んでくる。  そんな娘が、憎くて仕方ない。  娘だけが自由になるなんて、絶対に許せない――
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