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終章 少女の巣立ちと呪いの終わり
枕元で、スマホが軽快なメロディを鳴らしつつ振動する。
じりじりと布団の上へ乗ろうとするスマホを右手で押さえ、アスカは素早く指を画面上で滑らせた。
ぴたりと音を止めたスマホの画面に、現在の時刻とメッセージアプリの通知が一つ現れる。アスカは眠い目をこすりながら頭を起こし、通知を叩いてアプリを起動した。
寝起きには眩しい画面上へ、いくつものメッセージやイラストが縦に連なって表示される。一番下にはサングラスをかけたハリネズミのキャラクターとともに、「おはよう」という一文が添えられている。
「紗理奈ちゃん、相変わらず早起きだなぁ……」
大きなあくびをし、アスカは布団をはねのけて起き上がった。
紗理奈は今、市外にある有名な進学校に通っている。
中学を卒業する少し前、紗理奈は両親からスマホを持つことを許された。高校生にもなれば持っていないと何かと不便、という理由らしいが、両親が紗理奈の努力を認めてくれたのも大きいだろうとアスカは思っている。
実際、紗理奈の努力は凄まじいものがある。中学では卒業直前までクラスで一番の成績を維持していたし、今でも朝早くに起きて学校の講習に参加しているらしい。
そんな中でもダンスの練習は欠かしていないというのだから、アスカは紗理奈に対して尊敬の念を抱かずにはいられない。
中学生の頃に本心をぶつけ合ったおかげか、近頃は両親も紗理奈のダンスを応援してくれているらしい。いずれは動画に収めて、たくさんの人に見てもらいたいと紗理奈は言っていた。
「私も頑張らなきゃ」
アスカは布団から飛び出し部屋を出る。冷蔵庫を開けて、牛乳と駿が昨晩にくれたサンドイッチを取り出してテーブルに置く。
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