14人が本棚に入れています
本棚に追加
《ハリーVERSION》
志村ヒサシの告白を聞いてオレも胸が締めつけられる思いだ。
最愛のフィアンセを喪った哀しみは計り知れない。
しょせんオレたちは他人でしかないんだ。
「あの子の母親も花が好きだったからね」
管理人の九十九も父親らしい事を言った。
「そうですか」
きっと優しいお母さんだったのだろう。
『これは本城マリアさんのフェイスノートにあった画像です』
不意にナポレオンが画像を送ってみせた。
そこには本城マリアが白いマーガレットの花束を持って幸せそうに微笑んでいる姿が映っていた。優しさが滲みだすような可愛らしい笑顔だ。
隣りで志村ヒサシも恥ずかしそうに笑っている。お似合いのツーショットだ。
『『忘れないで……』。白いマーガレットの花言葉です。本城マリアさんのコメントが寄せられていました』
「そうか……」
また志村ヒサシは哀しそうに微笑んだ。目には薄っすらと涙が滲んでいた。
「フフ、絶対に忘れるはずはないさ……」
彼は空を見上げ、そっとつぶやいた。頬を涙が伝っていく。
『それから九十九さん。これだけは言っておきますが……』
ナポレオンが優しく微笑んだ。
「なんだね……。私も覚悟を決めたよ。このあと警察へ自首するつもりだ。姫乃さん。よろしかったら弁護を頼めますか」
「ええ……、私で良ければもちろんです」
セクシー弁護士も笑顔で頷いた。
『そのことでご提案があります』
ナポレオンが優しく微笑んだ。
「ン、提案……、なんでしょう」
『ええ、ボクは謎さえ解ければ良いのですから。
管理人の九十九さんを警察へ告発したり逮捕する気はありません』
「ええェ……?」驚いて管理人の九十九と志村ヒサシは目を丸くした。
『ボクたちも本城マリアさんのことは忘れません。ねえェ……、アリス』
「ええェ……、そうね。ジゴロが自ら命を絶った。それでこの事件はお仕舞い。キレイさっぱり事件の事は忘れることにしましょう」
セクシー弁護士はニッコリ微笑んだ。
「本当ですか……」ホッとしたような顔だ。
『ええェ……、迷惑系YouTuberのハリーも守秘義務を遂行できるかな』
「おいおい、バカにするなよ。オレだってちゃんと秘密は守るよ」
「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言って良いか」
管理人の九十九と志村ヒサシは深々と頭を下げた。
青く澄んだ空にひとすじの飛行機雲が流れている。
決して、今日のことは忘れないだろう。
墓石に供えられた白いマーガレットがそよ風に揺れていた。
LOVE FOREVER
愛よ。永遠なれ!
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
最初のコメントを投稿しよう!