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最終章 この恋もいつか忘れる
あれから1週間。美鈴が例のイケメン彼氏と喧嘩したという理由で誘われてまた訪れた安い居酒屋。
ビールを飲みながら永遠と彼氏の愚痴をひたすら語る美鈴に真希は適当に相槌を返していた。
喧嘩の内容は、週に一度あるかないかのデートがショッピングセンターのフードコートでご飯を食べて建物内のスーパーで買い物をしただけという高校生のようなデートだったらしい。
「私はもっと贅沢したいのに」
そう言って2杯目のビールに口をつける美鈴に真希は頬杖をついて言った。
「彼氏君、あんたのためにお金貯めてくれてんじゃないの?」
「そんな訳ないでしょ」
「でも、指輪の時とかそうだったじゃん」
「婚約しただけでまだ籍入れてないし結婚指輪も貰ってないもん」
そう言って近くを通った若い店員に「からあげ!」と注文する美鈴を見て真希は小さくため息をついた。
「私なんか元彼…大翔に会っちゃったのに」
「え?マジで?」
そう言って目をキラキラさせる美鈴。そういえばこの子、少し前まではこういうドロドロした恋愛してたんだよな、と真希は思う。
「でも、私は美鈴みたいに一線越えたりとかはしてないから」
「じゃあ、キスは?」
楽しそうに聞いてくる美鈴。そんな親友の顔に少しイライラしながら真希は首を横に振った。
「そんなのする訳ないでしょ。相手既婚者だよ?」
「そっかー。じゃあ、石川君を奥さんから奪って駆け落ちとかは?」
「私はそんなスリルは求めてないって。大体夫がいるのになんでそういう発想になる訳?」
美鈴は運ばれてきたからあげを受け取りながら「何でだろうね?」と真希に聞き返した。
それはこっちが聞きたい、と思いながら真希は机の上にあった冷めた焼き鳥を手に取った。
「そういえば、真希」
「ん?」
「真希って結婚してからもデートとかしてんの?」
「え?何で今それを聞くの?さっきまであんたデート中に彼氏と喧嘩したって言ってたのに」
「良いから教えてよ」
そう言ってからあげを口にはこぶ美鈴に真希は小さくため息をついた。
「してるよ。うちまだ子供いないし」
「じゃあ、どこ行ってる?」
「映画館とか夜景スポットとか?」
「へー大人ぁ」
美鈴はそう言ってビールをまた一口飲んだ。
「美鈴は?」
「だから、フードコートだって!いっつもそれ!」
「やっぱり彼氏君お金貯めてくれてるんだって」
「でも、もう少しどっかあるでしょ?」
美鈴はそう言うと、いつの間にか机に置かれていたレモンサワーを一口飲んだ。
「昔はもっとデートしてたんだよ」
「付き合ってたことあったの?」
真希の質問に美鈴は首を横に振った。顔が赤いことから酔ってきていることが伺える。こういう時の美鈴は、いつもと違って素直なことが多い。
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