第一章 旦那は二番目に好きな人

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「今年ね。式も最近したんだ」  そう言って真希は指輪を見せた。大翔はそれを見て「へーいいじゃん」と呟くように言うと続けた。 「結構最近?」 「うん」  無理矢理笑顔を浮かべて頷いた真希に大翔は「そっかー」と呟いて顔を上に向けた。 「真希も人妻かー」 「ちょっ、人妻って。何その言い方」 「間違いではないじゃん」 「まーそうだけどね」  そう言って大翔とは逆に真希は下を向いた。  お互い結婚していて自分は少し前まで新婚ハイだったのに大翔と再開したからかそれが一気になくなった気がする。  その理由は分かっている。1番好きな人の隣にいるからだ。 「俺さ、真希は結構早いうちに結婚してるかと思ってたんだよね」 「え?なんで?」 「なんとなく?だって、真希は料理得意だししっかりしてるし仕事も家事も頑張ってくれそうじゃん」 「そう見える?」 「めっちゃ見える」  そう言って大翔がニカッと笑った。それに釣られて真希も彼に微笑み返した。  そうしていると、いつの間にかサービスカウンターからいなくなっていた若い店員が小走りでカウンターに戻ってきて「大変お待たせ致しました」と大翔に声をかけた。 「お間違いないか確認だけしていただけますでしょうか?」  そう言って若い店員は大翔にスーパーのロゴが入った白いビニール袋を手渡した。 「分かりました」  大翔は袋をあけて中からシルバーの結婚指輪を出すとそれを確かめた。 「これです。すいません、ありがとうございました」  そう言って大翔が店員に頭を下げる。  本当からこれでハッピーエンドなはずなのに真希にはそれが終わりのようで寂しい気分になった。  店員にもう一度お礼を言って出口に向かおうとする大翔を真希は「大翔」と慌てて呼びとめた。 「ん?何?」 「あのっ、私今旦那を待ってるんだけど、買い物を頼まれてて。いつ来るか分からないし、大翔も一緒にどう?」  普通に考えると、どうして他人の家の買い物に元カレを突き合わせるのか自分でもよく分からなかった。でも、彼は嫌な顔一つ浮かべずに「じゃあ、一緒に行こっか」と言って笑顔を浮かべてくれた。  そういえば、大翔はこんな奴だっけと思う。心が広くて少しお人好し。そんな彼だから好きになったのだと思う。  そして、信じたくないけど今も大翔が1番好きだ。
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