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「それは、わかりますけど。同性同士じゃどうして結婚できないんだろうって疑問に感じたことは私もあるし……。だけど、よりにもよって、これから一年同じクラスになれるっていう春のこの時期に告白してこなくたって」
「この時期だからこそ、じゃないの?……これからの一年を、貴女と、新しい関係で迎えたかったんじゃないのかしら。自分の気持ちに、嘘をつかずに」
「…………」
私は、思い出した。桜の花びらが散る中、ずっと俯いていた彼女を。泣き出しそうな顔で、返事はいいから、と言った未空を。
ひょっとしたら、彼女は私が固まったのを見て、気持ち悪いと思われたのではと恐怖したのではと気づいた。私が、何も言わなかったせいで深く傷つけたのかもしれない。――それほどまでに、それほど同性の、ずっと一緒だった親友に告白するということに勇気が伴っていたのだとしたら。
「……私、未空に……酷いこと、したのかな」
私だって苦しかった。そう思う気持ちがないわけではない。
でも、ひょっとしたら未空は私の何倍も、何十倍も時間をかけて苦しんで決断して、あの日を迎えたのかもしれなくて。私はそんな彼女の悩みに、ずっと気づかなかったのかもしれなくて。
「新座さんのこと、友達だとしか思えない?恋人になるのは嫌?」
「……わかんない、です。だって、今まで考えたこともなかったし。でも、これからもずっと、友達でいたいって気持ちは……変わらないから」
「なら、その気持ちを素直に伝えるのも勇気じゃないかしら。……それに、貴女のことが好きだって、貴女がそんな新座さんの気持ちを知っているだけで変わることもあるのよ。少なくとも貴女はそんな彼女の気持ちを尊重して一緒に歩むことができるでしょ?男の子と付き合わないのーなんて雑談の中で話したりすることもなくなるでしょうし」
「あ、それは……」
「ね?……友情と、恋愛。一緒であるようであって違うこと、結構あるでしょう?」
確かなことは一つね、と。
先生は私の手を握って言ったのだった。
「新座さんを救うのも幸せにするのも、貴女にしかできないことよ」
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