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吾妻先生の言葉の全てを理解できたと言えば、嘘になる。
そして、全ての答えが出たわけではない。私はまだ、自分が本当に異性しか愛せない人間なのかなんてはっきり言いきれないし、同性の彼女と恋愛するのが嫌なのかどうかなんてまったくわからないことであるのだから。明確な答えを出すには、私はまだまだ未熟で、知識も経験も何もかもが足りていないから。
色々なことに結論を出すには、まだまだ多くの時間がかかることだろう。でも、はっきりしていることもあるのである。
それは、私がこれからも、“どんな形であれ”未空と一緒にいたいということ。未空を傷つける自分は嫌だし、それこそこれからも隣で花のような笑顔を咲かせていてほしいということ。
「未空!」
今日はバレーボール部も休んだ。
美術部の活動が終わって美術室から出てきた彼女を待ち伏せし、私は名前を呼んだのである。驚いたような未空に、私はちょっとだけひっくりかえった声で告げたのだった。
あの日、未空が振り絞った分の、半分でもいいから。勇気を、今。
「は、話が、あるんだけど!」
私にしかできないことが、此処にある。
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