あなたの愛は一挿しで私を殺す

「あとで消すから」

　スマホの画面には、支援団体らしきSNSのプロフィールが表示されている。
　#リベンジポルノ　#動画　#画像　#相談　#匿名　#ネット被害　＃削除依頼
　そんなハッシュタグがたくさんついた投稿に、目が吸い寄せられた。

「親に内緒でって依頼できる、弁護士さんもいるみたいだね」
「でもうち、あんまりお金ないし……」
「何かしなきゃ何も変わらないから、とりあえず相談してみない？　お金が無理なら、別の方法を教えてもらえるかもしれないし」

　何かしなきゃ何も変わらない。そう言われて思い出した。杏ちゃんは確か、昨日も似たようなことを言ってたなって。

『何もしないでいると、どんどん大きくなって、もっと痛いことになる』
　きっとそれは、杏ちゃんの経験なんだろう。
　怖くて痛い思いをした、中学生の杏ちゃん。たぶんうちと同じように、泣いて、後悔して、死にたくなって。

　もしかしたら、うちよりもっとずっと長い間、一人で悩んだのかもしれない。
　誰にも相談できなくて、親には知られたくなくて。だからこそうちに声をかけてくれて、「できるだけ早く」って、怖いくらいに真剣に、言ってくれたのかもしれない。

「何かしなきゃ……何も変わらない……」
　そんなの、いやだから。
　うちは自分のスマホを鞄から出して、SNSのアイコンをタップした。