「あとで消すから」

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「そ……」  そんなことが。そうだったんだ。それが、理由。  杏ちゃんに感じてた、いろんな疑問が一気に解けた。  クラスで一番の優等生。どこか大人びた感じのする、お節介な杏ちゃんの、意外で悲しい過去。 「杏ちゃん……うち、どうしたらいい?」  シチュエーションは違うけど、つらいことを経験してきた仲間、むしろ先輩みたいに思えて。うちは劣等感もプライドも見栄も捨てて、自分の気持ちを正直に打ち明けた。 「電話しても、先輩絶対出てくれない。家は知ってるけど、待ち伏せとかはしたくないの。先輩だって家族に知られたくないと思うし、それにうちも……親にだけはバレたくないんだ」  先輩の家に泊まった日、親には、バスケ部の友達とお泊まり会だって嘘をついてた。彼氏がいること自体話してないから、デートのたびにつく細かい嘘はもう、山ほど積み重なっていて。それがバレるだけでも無理なのに。  もしもあの動画を、観られたりしたら。 「うちの親、ショックで死んじゃうかもしれない……」  成績が良くない分、素直で明るい子に育ったふりをしてきた。元気が取り柄の、天真爛漫なさくら。そう信じてる両親に、こんな現実、受け入れられるわけがない。 「匿名で相談できる、リベンジポルノ被害専門のサイトもあるみたいだよ」  テーブルにうつむいたの目の前に、杏ちゃんのスマホがすべり込んできた。 「リベンジポルノ……?」 「振られた腹いせにされることが多いから、そう呼ばれてるんだって。でも、やられたことは一緒だから」
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