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それから彼が仕事へ行き、手持ち無沙汰に1日を過ごした。
彼の部屋を物色してみようかと思ったけれど、ぽかぽかと日差しが降り注ぐ窓辺で休んでいたらあっという間に夜になっていた。
「ただいまー」
愛しい人の声に飛び起きて、玄関のほうまで迎えに行く。
「はは、可愛いな。寂しかったか? ご飯にしような」
また優しい微笑みを浮かべた彼に頭を撫でられると、全身が幸せに満ち溢れた。
ああ、猫ってこんな生活なのね……。食べて寝て、可愛がってもらえて最高じゃない。
本当にずっとこのままでもいいかもしれない――
「わー本当に猫ちゃん飼ってる! 可愛い!」
ずっと猫でいたい、と思った瞬間。玄関の扉がもう一度開いて、甲高い女の声が聞こえてきた。
「はじめまして。お名前は何ていうの?」
そう言って、白くて細い腕がこちらに伸びてくる。
「名前はまだ決めてなくて……あっ!」
その手が到達する前に、彼の腕をすり抜けて部屋の奥へと駆け戻る。
行き場を失った私は、彼の手の届かいないベッドの下に潜り込んだのだった。
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