6:落とし堕とされ

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「いいよ。安心して好きになって。…俺も大和が大好きだよ」 っ…仁が、好きって言ってくれた。 ドア越しでも分かるくらい笑みを浮かべたような仁の声に涙で視界が滲んだ。 こんな一言で安心出来てしまうのか。俺はどれだけ仁の事が好きなってしまってたんだろう。 ………ちょっと待てよ。もしかして俺は何番目とかそういう話ではないよな? 「あのさ…まさかと思うけど俺以外にそういう事言っている人が居たり、何番目とかそういう…」 「もー。懲りないなぁ。そんなわけないじゃん。前も言ったけど俺は好きな人が出来たら一途だよ」 「すっ、好きな人…。あ!でも前、持ってただろ!ゴム!」 「あぁ、あれは大和とするつもりで買って持ってるだけだよ」 「………俺と?」 「そう、俺と」 変わらずクスクスと笑っている仁の声に恥ずかしさのあまりその場で転がり足を抱えるように体を丸めた。 混乱して頭の中もピンク色に染まるかのように想像してはいけない事をしてしまった。 「う、うっ、や、ヤラしい!何を考えてるんだよ!?そんなっ、俺と!?嘘だろ!?」 「大和。俺さぁ、ご無沙汰なんだよね。それも全部大和としたいから。ってことは、焦らした分大和には責任取ってもらうことになるなー」 「なな、なっ!俺の所為って言ってるように聞こえるけど!?」 「うん、大和の所為だよ。俺がどれだけ我慢してたか。まぁ最初は菫ちゃんが好きだったから誰ともしてないし、その延長だから大和がその期間ぜーんぶ背負うことになるな」 「そんなの理不尽過ぎるでしょ!ていうか臣を諦めようとしただけなのに、何か仁の事好きなってるし、仁はその事気付いてたし…っ、はぁ。俺、仁に負けっぱなしだよ」 「え〜、それ俺の台詞。ずっと大和には参ってるし、俺から大和に仕掛けた時点で俺の負けだよ。女好きの俺を落としたんだし、結局全部俺からだし。降参」 「…仁も思ってたのか」 「だからさ、早く顔見せてよ。俺、大和にキスしたいなぁ。後大和から好きって聞いてないから聞きたいなー」 背後から楽しそうな仁の声に対して両手で顔を覆う。 仁に好きって言っていいか聞いたのに、いざとなると恥ずかし過ぎて死にそうだ。けど仁も伝えてくれたし、俺も言わなきゃ。こんな機会を逃すなんて有り得ないよな。 「じ、仁。俺…」 「あ、ちょっと待って」 「?」 すると背後からガタンと音が聞こえて立ち去るような足音が聞こえた。 どこかへ行ってしまった?と思い立ち上がると、直ぐに戻ってきた音が聞こえた。そして鍵がガチャッと開くのが見えた。 「え!?」 「ここの部屋、1円玉で開くんだよね」 真っ暗だった部屋に仁がいとも簡単に鍵を開けてしまったことで廊下の光が入ってきた。まさか開くとは思わずに口を半開きで後退りながら目を丸くした。 「あ、開くのかよ……ズルい奴だな」 「俺の部屋に勝手に逃げ込む奴が悪い」 仁は得意げに笑みを浮かべると、一円玉をポケットにしまった。 そして、しんと静まり返った部屋で仁と目が合う。味わったことのない恥ずかしさで目線を下に向けると、仁が両手を握り締めてきた。 仁の熱い手に触られただけなのに、緊張で面白いくらいビクッと反応した。 「廊下の光だけでも大和の顔が真っ赤なのが分かる」 「…恥ずかし過ぎて死にそうなんだよ」 「可愛いなぁ。俺も同じだよ」 そう言いながら俺を引っ張ると、強く抱き締めてきた。 仁と抱き合っている。それこそこんな事が起きると思いもしなかった。 それでも仁の言った通り、胸から速い鼓動が聞こえて仁と同じなんだと知れただけで嬉しかった。 仁の胸に顔を預けると、背中に回した手を緊張して無意識に仁のシャツをギュッと握っていた。 「俺、最初は仁の事苦手だと思ってたけど、どんどん仲良くなれて、意外と良い奴だって知れたし…お互い料理が下手だって事も、何気なく一緒に喋ってる空間も楽しかった」 「うん、俺も同じ事思ってるよ。料理の時とかあんな素顔見せれるの大和くらい。…それで?」 「それで…その…頭の中が仁でいっぱいで、それなのに仁もその事を受け止めてくれている幸せを逃したくない。こんな日が続けばいいと思ってる。ずっと一緒に居たい。…そのくらい仁の事が好きなんだ」 そこまで言った時に仁が肩を掴んで少し話すと、頰を両手で包み込んできた。 「もう一回、俺の目を見て言って」 仁は真剣な顔で覗き込んできた。先程まで笑みを浮かべていたのに、そんなかけらも無く真面目な顔をしている仁にドキッとした。 目の前にある整った顔を直視するだけで心臓が壊れそうなくらいドキドキした。それでもしっかりと仁と目を合わせた。 「仁が好きだ。……っ」 はっきりと伝えると、仁はもう一度唇を塞いてきた。それから唇を離すと、仁は幸せそうに満面の笑みを浮かべていた。 「やっと聞けた」 そう言って微笑む仁の姿に幸せを感じて、釣られるように口元が緩んだ。 「大和、ちょっとごめんね。あれだけじゃ足りない」 「?……うっ、ん…っ!」 添えていた手を移動させ、下唇を親指で少し下に押さえ、開いた口元を狙ったようにキスをしてきた。それから隙間から入り込むように舌が入ってきて、驚きで仁のシャツを強く掴んだ。
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