腰痛の正体

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腰痛の正体

 酷い腰痛に悩まされて、少し動くだけでも脂汗が出るんですと須貝さんはふうふうと杖をついて待ち合わせの喫茶店へとやってきた。  怖い話、主に自身の体験談を聞くことが主としている私にとっては冷たいかもしれないが腰痛の愚痴を言われても「医療機関でしかるべき治療を受けてください」としかアドバイスできない。そう伝えたところ「ひどい、愚痴を言っただけなのにそんな突き放すなんてずるい」と丸い顔をますます丸く赤くして、まるでタコみたいな様相で怒られてしまったので、本来ならば下げたくない頭ではあるが「申し訳ありません」とわびた。  その仕草に満足したらしく、赤らめた顔を痩せて背の高い、やや美人のウェイトレスが持ってきた氷水をぐいぐい飲み干してほてりをさまし「まあわかればいいんですよ、ところであの女、絶対整形ですよね」などとこれまた無関係なことを口に出す。 「あのう、それで怖いお話というのは?」  このままではらちがあかないと思い、私は問いかけることで本題に入ろうとした。すると須貝さんは「いいじゃない、これぐらい。せっかちなんだから」とメニューを見て、通りかかったやや筋肉質でがっちりした体型のウェイターへ「すいませえん」と鼻にかかった声で呼びかけると「エビグラタンとバゲットとサラダのセットにい、食後はクリームソーダくださあい」と注文して、メニューを乱暴にバタンと閉じると、テーブルの脇にあるブックエンドに挟んだ。 「整形女が、もともとブスのくせに、さっきからじろじろ見ている気がして気に入らないわ」 「え?そうですか?」  そうよ、と須貝さんは言うが先程の彼女はあわただしく接客をしていて、そんな暇などなさそうに見える。  話を合わせた方がよいかどうかも微妙で、しかも本題を求めている私の気持ちはまるっきり無視されている状況に対してやや苛立ちを覚えたけれども、はっきり言えば角が立ちそうで向こうのペースに合わせるしかないのだろうかとなかばあきらめの境地にいた。 「立ち仕事の人ならわかるけれど、座り仕事で腰痛とか聞いたことないわよ」 「いやあ、どうなんでしょうね」 「ないわよ!あるわけないでしょ?馬鹿なの?」
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