腰痛の正体

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 鈍いわねえ、と染田さんは目の前に出されたクリームソーダをずるずると飲み始めた。 「本当に腰痛かどうか、傘のとがっているところあるでしょ?そこでぐいぐいつついてやったのよ。染田ったらわざとらしく痛い痛い、やめてくださいって逃げようとするから倉庫の鍵も閉めてやったわ」  ふふふ、とあくどい笑みを須貝さんは浮かべた。 「私としてはそれだけじゃまだ確信が持てないし、次の検査をしてあげるってわざとうつぶせに転ばして、馬乗りになって、腰に乗っかってやったわよ。痛いですか?痛いですか?って何度も問いかけながらね。あいつ細くてスタイルがいいから男受けもよかったし、むかついてたからちょうどよかったあ」  ややぽっちゃりとした体型をしている須貝さんだから、痩せている染田さんが馬乗りにされればどうしようもないだろう。  その結果、染田さんは頸椎を損傷し、緊急入院する羽目になったらしい。  幸い酷い後遺症が残るような大事には至らなかったものの、須貝さん自身は備品倉庫への入室を禁じられてしまい「ちょっとこらしめただけなのに、ずるい」とこぼした。当たり前の処遇ではあるが、須貝さんとしては納得できないらしい。 「染田のやつ、大袈裟に入院までして……その上診断書や弁護士まで立てて訴えるとか、生意気なこと言い出すからやれるもんならやってみなさいよ、って電話で怒鳴ってやったんだから!」  丸い鼻から、ぶふー、ぶふーと荒い鼻息を吹き出しながら無理矢理に須貝さんは自分を正義を貫いたという信念を変えないようであるが、どうやら泣寝入りなど可愛い真似をしなかったらしく、今や須貝さんは弁護士を通してでしかやり取りしていない染田さん自身からの「反撃」に遭って、そのせいで腰が痛くて仕方ないそうだ。
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