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「毎晩毎晩、染田が私の部屋に来るのよ!私をうつ伏せにして、同じように馬乗りになって、時には腰の上に立って飛び跳ねてきたり…生意気に、私と同じことをしてくるんだから、ふざけんなって感じよ!それに、痩せているくせにまるで岩みたいに重くて……おかげでこんな格好にさせられたんだから!可哀想でしょ?可哀想って言いなさいよ!パパとママもそっぽむくし、腰痛で動けないって会社にも話したら、自業自得だって課長から注意されるし減給されるし、医療費も自分で払えって言われたんですよ?染田は労災が認められたから財布から一銭も出していないくせに、私だけ医療費がかかるなんて、ずるいわよ!ずるいとしか言いようがないでしょ?ねえ、チョコパフェ食べていいわよね、あんたが取材費で出してくれるんだからモトとらなくちゃ!あー痛い痛い、ねえちょっとそこのお兄さあん、お水くれない?痛み止め飲まなくちゃ」
「は、はあ……お好きに。出版社から落とせますので」
「あんたまでずるい、周りにいる奴ら、ずるい奴ばっかり!」
そう叫ぶと、須貝さんは山ほどの鎮痛剤をバッグから取り出した。
治る見込みは薄そうだな、と私は思った。
まるでラムネをかじるように鎮静剤を飲む須貝さんの背後に、彼女をじっと睨む細身の女がふわふわと見えていたからだ。
あえて、須貝さんには言わないでおくことにした。
どうか、染田さん……彼女が順調に回復していますようにと祈りながら。
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