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ピリリリリ…
ポケットで鳴り響く着信音。
切原は携帯を取り出し、画面を確認する。
知らない番号…新規の依頼か。
そう思いながら電話に出る。
「はい。嘘つき屋です。」
「あ、あのっ…僕を殺してくれませんか!」
予想通り新規の依頼ではあった。
ただ、思いがけない内容に一瞬言葉を失う。
「…生憎ですが、うちは犯罪は請負っておりませんので。」
切原はなるべく落ち着いた声でそう答えた。
「あ…、すみません…
そうじゃなくて、えっと…
お願いしたかったのは、自殺を他殺に見えるようにして欲しいんです。」
「なるほど。…でも、自殺幇助も犯罪になりますので、その依頼は受けかねます。」
「そ、そうですよね…。
すみません、変な事言って…」
電話の相手は恥ずかしそうにそう言って電話を切ろうとする。
「あ、ちょっと待って下さい!──自殺幇助は出来ませんが、何か力にはなれるかも知れません。」
「えっ…?」
「よかったら話だけでも聞かせてもらえませんか?」
切原は変わらない落ち着いた声で、そう問いかけた。
───声から察するに、相手の男性は30代といったところだろうか。
自殺を他殺に…恐らく保険金目当ての自殺か。金銭的な問題を抱えているのだろう。
切原は考えを巡らせながら、何とか彼の命を守りたいと思った。
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