猿(エン)

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 森林公園に猿園がある。 ウオーキングの途中に、なぜか急に寄ってみたくなった。 休日には家族ずれで賑わうのだが、ウイークデーは閑散としているようだ。  猿園は、傾斜地に造られた直径30mくらいで、高さは7m近くもあるコンクリート構造だ。木登り用の柱や、そこに括りつけられた木上小屋、そしてブランコや池などがある。  来園者は、それらを上から見下ろすかたちで30匹余りの猿を見ることができる。  猿たちは2,3匹ごとに2メートルくらいの間隔をあけ毛繕いをしたり、ゆったりと寝そべってたりしている。たまに、キーッと叫び声をあげた小競り合いがあるが、すぐに落ち着く。  どの猿も人がいても、まったく気にも留めない。 そんな中、一匹の猿と目が合った。私を見ているようだ。何か言いたそうだ。  私もその猿を見つめ返す。軽くしびれたような感覚で猿と何かがつながり、視線が離れなくなった。頭の中がかっと熱くなったかと思うと、次の瞬間、声が聴こえてきた。 「おまえは自由か?」猿から聴こえてくる。 いや、猿が会話できるはずはない。私の脳の言語野に直接話しかけてくる。これはテレパシーというものなのか。
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