猿(エン)

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「少なくとも動物園の中の猿よりはね」私も声に出さずに答えてみた。 「おれ達は好きでここにいる。安全は保たれているし、食べ物にも困らない。おまけに病気になったりケガをしてもすぐに診てもらえる。しかもタダで」猿が言う。 「でも、どこへも行けないだろう?」と私が言う。 「こんなコンクリートの囲いなんて、いつでも出られるさ。現に、何匹かの仲間が外へ出たことが地元のニュースにもなっただろ。それに、隣の鹿園の話をしてやろうか。餌があるからといって、野生の鹿があの高いフェンスを越えて中へ入ってきたんだぜ。逃げるどころか、向こうからわざわざ中へ入って来たくらいなんだ」猿は笑って言う。 「人は真の自由を求めるものなんだ」さらに私は言う。 「あんたは、いつも上から目線だよな。  そのくせ、いつも自分を安全なところに置いて、いい子ぶって。昔からずっとそうだよな、知ってんだぜ」猿は言う。 「いきなり何を言う。お前に何がわかるというのだ」私が言う。
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