猿(エン)

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「何が分かるかって?ちゃんちゃらおかしいとはこのことだ。なら、言ってやろうか。お前は最近、くだらん文を書いてSNSに投稿してるってな。当たり障りのない、ちょっと知ったかぶりの文章を書いてカッコつけてるよな。そのことはお前が一番自覚してるんじゃないのか。ぜーんぶ知ってるぞ」猿は言う。 「何?」私は絶句した。 「本当は、もっと書きたいことがあるんじゃないのか。そんな甘ったるいきれいごとじゃなくて。自分自身の、そして人間の根源たる欲望を。おまえは逃げているだけじゃないのか。本当の自由って知ってるか。そのためには、変化を恐れちゃいけないんだ。変わらなきゃダメだね。セミは一生、土の中にいるか?トンボは一生、水の中でヤゴとして生きるか?変化だよ、変化。大空を自由にはばたきたいと思わないか。それを手に入れるためにはリスクをとる覚悟も必要だぜ」猿が続ける。 「お前は誰だ」私は猿に言いながらも、その答えを聴くのが恐ろしくなってきた。 「勘のいいあんただ、薄々気づいてるんじゃないのか。おれは…」猿が言う。 「やめろ!」思わず私が叫ぶと同時に、その声は突然途切れた。
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