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「そうよ、世間に見せつけてやらないといけないんだったわ。私の幸せを」
ハルの肘に添えていた右手の拳を硬く握ると、ハルにため息を落とされた。
「俺たちの幸せ、な」
あ、そうでした。
てへっと笑ってごまかしていると、タイミングよく「水ちゃーん」と声がかかった。
呼ばれた方向に視線を向けると高校時代の仲良しの友人たちがカメラを構えて手を振っていたことに気が付き思わずブーケを持った手をブンブン振って応えてしまっていた。
その後も、呼ばれる方向に視線を送り友人知人の顔を見つける度に笑顔で応える。
隣に立つ美形にはどうやっても勝てない花嫁ではあるけれど、長いこと拗らせていた初恋の相手と結婚できた幸せな花嫁であることは間違いない。
もう開き直って自慢してやる。
「水音。やっぱあんまり見せなくていい」
再び隣からため息を落とされハルの顔を凝視してしまった。
「見せろといったかと思ったら見せるなって。私だって20年近く好きだった人と結婚したんだから自然と笑顔になっちゃうの。我慢したくないから」
「は?」
ハルの目が大きく見開かれため息をついていたはずの表情が一転して嬉しそうにキラキラと輝きを取り戻していく。
「20年ってホントか?」
「ハルが初めてうちに来た時わたしはまだ小学生だったから。そろそろ20年になるでしょ」
「その頃から俺のこと好きだったって?」
ハルの目の輝きにあれ?と思った。
「言ったことなかったかしら?」
「ない」
そう言えばなかったかも。
って言うか知ってると思ってたんだけど。
フフッと笑ってハルの顔を見たら、空いていたハルの右腕が私の腰にがっちりと回ってきてあっという間にハルの顔が近付いてきて唇を塞がれた。
んんんー
こんな人前でキスなんてーーー
軽いやつじゃなくてしっかりと濃密なキスをされ腰が抜けそうになり恥ずかしくて顔が上げられなくなる。
・・・教会の外でフラワーシャワーを浴びながらちょっとした距離を移動するだけだったはずなのにどうしてこんなことになった。
おかげでブーケプルズの時にもフラフラしていてハルに腰を支えてもらわなければ立っていられなかったほど。
もうっ。
俯きながら意地悪が成功しさぞかし涼しい顔をして隣に立っているのだろうと隣に立つハルの顔を盗み見るとーーーそれはそれは嬉しそうに笑顔を振りまいていた。
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