ハル来たりなば…~お見合いにgo~

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「ああーーーーわかった。もういい。自分で脱がなきゃ俺が脱がしてやる」 焦れた様子のハルが自分の頭をグシャグシャっと掻いて私に近付いてくる。 え、まさか? 「ちょっと、待って。本気?」 「自分で着替えない水音が悪い。着替えも場所も準備してやったのに」 で、でもーーー。 ハルの手が私の帯に掛かった。ヤバい、これマジだ。 「ハル、ハル。ごめん、自分でやるから。やります、できます、ダイジョウブです」 必死の訴えが届いてハルの手が帯留めを解いたところで止まった。 「じゃあ早く着替えて」 むっつりとした顔で腕組みして仁王立ちしたハル。 だけどーーー 「ええーっと。だからですね、もう一度部屋から出ていってくれませんかって話なんですが」 上目遣いでお願いしてみるけれど、 「ダメ」 即座に却下された。 「さすがに着替えにくいんですけど」 「俺が出ていったらまた着替えないでうだうだするんじゃないか。時間の無駄だ」 「…さすがにもう抵抗しません。振袖苦しいし、動きにくいし。なぜか私の着替えもここにありますし」 殊勝なことを言えば部屋を出ていくと思ったのに、そう簡単ではなかった。 「うん、だったら早く着替えて?」 にこりと綺麗なお顔に綺麗な笑みを浮かべて無理をおっしゃる。 部屋から出ていく気はなさそうだ。 笑顔、黒いよ。真っ黒なんだけど。 あー、私のばか。 最初から、ハルが出ていってくれた時に着替えておけばよかったんだ。 「すみません、ハルさん。さすがにちょっと人前で脱ぐのは・・・洗面所で振袖を脱ぐのも狭くて大変そうなので、ハルさんが洗面所に行ってくださいませんか」 黒い笑みを浮かべた男にペコリと頭を下げた。 「ーーま、仕方ないか。そこは譲歩してやる。早く着替えるんだぞ」 「ハイ。可及的速やかにやらせていただきマス」 こくこくと頷くと、ハルは黒い笑みをほんの少し薄くしてベッドの端に座りくるりと後ろを向いた。 あれ? 「出ていってくれるんじゃないの?」 「下着姿になる前に出ていくけど、とりあえず着替え始めるのを確認してからな」 なんなのよ、全く。こうなったらやけだ。 ふんっと鼻息を荒くして帯留めを引き抜いた。 わざとらしく大きく今日何度目かのため息をついてやると、 「水音、手伝おうか」 とワントーン低い魔王様の声がした。 「いえいえ、手は足りておりマス」 慌てて帯を外す作業に取りかかることになってしまった。
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