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「また、外国、行く?」
「ああ。しばらく国内線続いてたけど……次は明後日、かな」
「じゃあ、また帰ってこない?」
花斗の声のトーンの下がり具合に顔をあげると、案の定しょんぼりと壱月の前で肩を落とす花斗がいた。
ちょうど洗い物が終わった私は、エプロンを外しリビングへ移動した。
しゅんとした花斗の頭をポンポン撫でる。
「パイロットさんは色んなところに飛行機を飛ばして、たくさんの人を運ばなきゃいけないの。世界中の人が色んなところに行けるのは、パイロットさんのお陰なんだよ?」
「でも……」
拗ねるように唇を尖らせた花斗は、チラッと壱月を見る。
けれども、その視線はすぐに下に戻ってしまった。
「壱月が乗せた飛行機のお客さんは、世界中の素敵なものを見て、帰ってくるの。たくさんの夢を運ぶんだよ。それってすごく素敵じゃない?」
私が言うと、花斗は今度はこちらをじっと見つめる。
「花斗もいつかパイロットになったら、ママを乗せて、空を飛んでほしいなぁ」
そう言うと、今度はにこっと口元を綻ばせ、ぎゅっと抱きついてきた。
「うん、ママもいつきも乗せてあげる!」
私は花斗をぎゅっと抱き締め返す。
花斗の後ろにいた壱月は、私と目が合うと複雑な笑顔を浮かべた。
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