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夜、花斗が寝静まったあと、壱月に呼ばれていつもの大窓のソファに座った。
「さっきのこと、でしょ?」
壱月は曖昧な笑顔で頷いた。
「あんな夢持たせて、いいのかって……こと?」
壱月はまた頷いた。
今度は、深刻そうな顔で。
「愛音は、どうやって伝えるつもりなのかなぁって」
「……考えたの。私、今までパイロットになれるだなんて、花斗に言ったことなかったし、『なれるよ』なんて、安易に答えたこと無かったの」
「うん」
「でも、壱月が憧れのパイロットだって知って、花斗、すごい笑うようになったから。……言ってもいいかなって」
「そうか?」
そうだよ。
花斗の笑顔を引き出したのは、悔しいけれどパイロットの壱月だ。
それで、私は嫉妬したんだから。
私は自嘲するように笑みを浮かべ、壱月の言葉に頷いた。
「花斗の夢は、パイロットになること。今は、それでいいんじゃないかなって」
「でも……」
「じゃあ、壱月は花斗の夢の芽を、つんじゃえる?」
壱月をじっと見つめた。
彼は、はっと目を見開いて、それからふっと笑った。
「やっぱ、愛音は強えや」
「そうかな?」
「うん、そう」
そう言いながら、壱月はこちらに向き直る。
「愛音、明日休みだったよな?」
「え? あ、うん……」
「じゃあ……」
壱月はポケットから取り出したスマホの画面を私に見せた。
「これ、行く?」
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