13 壱月は頼れるCAP

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 吸い込まれるようにブースのなかに入ってしまった花斗。  私も慌てて追いかける。 「ちょっと、花斗――」  言いかけて、黙った。私も圧倒されてしまったから。  操縦席を模した席と、その前に大きなテレビ画面のようなモニターが三つ。  そこには空が映し出されていて、その横には『飛行機の着陸体験をしてみよう』の文字。 「おうちの人と一緒にやろうね」  花斗は操縦席に座ろうとして、近くにいたお兄さんに止められていた。  あれ、彼、どこかで……? 「お兄さん、パイロットさん?」 「そうだけど……?」  制服から判断したのか、花斗はキラキラした視線をお兄さんに向けている。  私は慌てて花斗の隣に行き、「スミマセン」と頭を下げる。 「いえいえ」  お兄さんは頭を掻いて、それからしゃがんで花斗に視線を合わせた。 「君、やってみる?」 「これ、なに?」 「飛行機の、着陸するところが体験できるんだ」 「やる! やりたい! やる!」  花斗はぴょんぴょん跳び跳ねて、早速操縦席に座る。 「お子さん小さいので、お母さんも一緒に……」 「はい。……できるかな」 「大丈夫ですよ、僕の声に合わせてこのレバーを手前に引くだけなんで」  なるほど、それなら私にもできそうだ。  安心して操縦席の右横に立ち、レバーに手を触れた時だった。 「やだ、いつきがいい!」  えー、今それ言う!?  壱月はさすがに気まずいのではないかと、ブースの外で待っていてもらっている。 「いつきー! いつきと一緒ー!」  ああ、ダメだこりゃ。  そんなに大声を出せば、もちろんブース内に壱月が現れる。 「どうした、花斗?」 「いつき、一緒にやろ?」  そう言った花斗の横で、パイロットのお兄さんは目を見開いていた。 「海野キャプテン!?」
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