4724人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
花斗の隣で操縦レバーを握った壱月。
その向かいで、パイロットのお兄さんと並んで二人を見守る私。
どうやら、彼は壱月の後輩らしい。
「キャップが入るなら僕は必要ないですね」
彼はそう言うと機械をスタートさせ、そのまま見守る体勢に入ったのだ。
シュミレーターがスタートすると、どうやら椅子が振動するらしく「うわ」とか「わぁ」と声を漏らしていた花斗。
しかし、画面に地上が見えてくると、その目付きは真剣なものになる。
「いくぞって言ったら、一緒にレバーを動かす。いいな」
壱月のその言葉に、頷くだけで返事をした花斗は、両手でレバーをしっかり握っている。
それだけ見ていれば、とても微笑ましいのだが。
先ほど、壱月が現れた瞬間に驚きの声をあげた彼の後輩は、私たちと壱月を交互に見て、それから指でハートを作り小首を傾げた。
それを見た壱月が、私の肩を急に抱き寄せて「恋人だ」と宣言したもんだから、むず痒くて仕方ない。
今も、隣から好奇の視線を浴びているようで、なんだか居たたまれなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!