13 壱月は頼れるCAP

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「はい、無事着陸です」  壱月の声に「やった!」と大きくガッツポーズを决めた花斗は、こちらに満面の笑みを向けた。  そして、シュミレーターから降りると私の足元に寄ってくる。 「ママ、見てた? すごかったでしょ!」 「うん、とってもすごかった!」  意識が完全に隣に持っていかれていたとは言えず、笑顔を浮かべてそう言うと、渾身のドヤ顔が返ってくる。  壱月と彼の後輩は、そんな私と花斗の隣で、何やらコソコソと話していた。  業務連絡かと思いきや、急に壱月が放った大きな一言に、私はぴくんと肩を揺らした。 「不倫なわけねーだろ!」  壱月ははっとした顔をすると、こちらに気付いて「ごめん」と肩を竦めた。 「え、でも、素敵な奥さまとお子さんじゃないっすかぁ」 「だから、俺の恋人。彼女はシングルなの」 「ああ……」  納得したのかしていないのか、後輩はこちらにじっと視線を向けている。  その視線があまり心地よくなくて、私はキョトンとこちらを見上げる花斗の頭を意味もなく撫でた。  すると後輩の彼は、突然手を打ち合わせて、それから人差し指を花斗に向けた。 「思い出した! キャプテンにぶつかった子だ!」  そうか、あの時……。  壱月と二度目の再会となったあの時。壱月を引き止めてしまったあの時。 『キャプテン、先行っちゃいますよ?』  そう言って壱月を急かしたのは、彼だったんだ。 「俺、海野キャプテンの後輩で、副機長の袴田(はかまだ)っていいます。そうかぁ、あの時キャップは“運命の出会い”をしてたんっすね!」  袴田さんはそう言って私に笑いかける。  私は彼に愛想笑いを返した。  だって、あれは“運命の出会い”というより、“最悪の再会”だったから。  だけれど今は、それも運命に思えてしまうから不思議だ。
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