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「こりゃ、CAたちは泣いちゃいますね」
「へ?」
キョトンとする私に、袴田さんは続けた。
「歴代二人目の我が社の最年少機長、しかもイケメン! それに抜かりない安全面への配慮。これは社内イチで、僕も尊敬してるんですよ。まあ、ご両親があんなことになったらそうなりますよね……。まぁ、そんなわけで、海野キャップは男女問わず人気な訳なんですが――」
「おい、もういいだろ……」
まだ話が続きそうな袴田さんを、壱月が声で制した。
ふと見れば、壱月は花斗を抱っこし、こちらに怪訝な視線を送っている。
そしてその隣の花斗頭の上には、疑問符が三つほど浮かんでいた。
袴田さんはへへっと笑いながら、「スンマセン」と頭を掻く。
「ま、そんな感じなんで……よろしくっす、奥さん」
ポンッと袴田さんが私の肩に手を置く。
奥さん……!
袴田さんの言葉にドキッとしたのに、その次の壱月の言葉で私の頬はさらに熱を上げる。
「気安く触んな」
壱月がそう言って、袴田さんを睨んだのだ。
袴田さんは「おおっ!」とニヤニヤを浮かべる。
壱月はそれを無視して、「行くぞ」と私の手をとり、さっさとブースから出て行く。
その頬は、心なしか赤い気がする。
それで、私はなんだか嬉しくなる。
「ママ、なんの話?」
私の少し前を歩く壱月に抱っこされたまま、花斗がこちらにひょっこりと頭だけ出して聞いてきた。
「あー……壱月はかっこいいパイロットさんだって話」
私が答えると、壱月は耳まで赤くなる。
「いつき、かっこいい!」
花斗は無邪気に笑って、壱月の首元にぎゅっと抱きつく。
私の手を握る壱月の手は、少しだけ汗ばんでいた。
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