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それから、花斗の「あれは? あれは?」攻撃に遭いながら、会場をひと周り。
昼時になり、ラウンジで昼食を取る。
すると、花斗はテンションが上がりすぎ振り切れてしまったらしい。
花斗ご所望の屋内デッキへ向かう途中、壱月に抱っこされたまま、花斗はすやすやと夢の中へ行ってしまった。
仕方がないので、寝てしまった花斗を連れ、そのまま屋内デッキへやってきた。
ここへ来たのは、壱月とぶつかって以来だ。
私はそれほど経っていないにも関わらず懐かしさを感じながら、壱月と並んで“花斗の特等席”に腰掛ける。
久しぶりに、目の前に大きな飛行機の頭が見えた。
「ふう。寝ちまうと、結構重いな……」
苦笑いを浮かべながら、壱月は言う。
「ごめんね、車だったしベビーカーいらないと思って」
「ま、いいんだけど」
そう言って壱月は前に停まった飛行機に視線を向ける。
その瞳は、心なしかキラキラしているように見えた。
「……好き?」
「え?」
「飛行機。やっぱり、好きなのかなぁって」
「好きってか……“相棒”だな」
壱月は窓の外に視線を向けたまま、ふわりと微笑む。
「一緒に空を飛ぶ相棒。仕事仲間。だから、体調確認も大事。特に、飛ぶ前は」
そう言う壱月の瞳が、一瞬、切なげに揺れた。
それで、袴田さんの言葉を思い出す。
『抜かりない安全面への配慮。これは社内イチで、僕も尊敬してるんですよ。まあ、ご両親があんなことになったらそうなりますよね……』
その真相を、知りたい。
壱月のご両親の死は、私との再会のすぐ後だったと、前に聞いたから。
もしそれに、飛行機が絡んでいるのなら。
「ねえ、壱月……」
「何?」
「……ご両親のこと、聞いてもいい?」
私と会えなくなるほどの、何か。
私と連絡を絶ってしまったほどの、何か。
それは、何だったのか、知りたい。
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