13 壱月は頼れるCAP

6/8
前へ
/195ページ
次へ
 それから、花斗の「あれは? あれは?」攻撃に遭いながら、会場をひと周り。  昼時になり、ラウンジで昼食を取る。  すると、花斗はテンションが上がりすぎ振り切れてしまったらしい。  花斗ご所望の屋内デッキへ向かう途中、壱月に抱っこされたまま、花斗はすやすやと夢の中へ行ってしまった。  仕方がないので、寝てしまった花斗を連れ、そのまま屋内デッキへやってきた。  ここへ来たのは、壱月とぶつかって以来だ。  私はそれほど経っていないにも関わらず懐かしさを感じながら、壱月と並んで“花斗の特等席”に腰掛ける。  久しぶりに、目の前に大きな飛行機の頭が見えた。 「ふう。寝ちまうと、結構重いな……」  苦笑いを浮かべながら、壱月は言う。 「ごめんね、車だったしベビーカーいらないと思って」 「ま、いいんだけど」  そう言って壱月は前に停まった飛行機に視線を向ける。  その瞳は、心なしかキラキラしているように見えた。 「……好き?」 「え?」 「飛行機。やっぱり、好きなのかなぁって」 「好きってか……“相棒”だな」  壱月は窓の外に視線を向けたまま、ふわりと微笑む。 「一緒に空を飛ぶ相棒。仕事仲間。だから、体調確認も大事。特に、飛ぶ前は」  そう言う壱月の瞳が、一瞬、切なげに揺れた。  それで、袴田さんの言葉を思い出す。 『抜かりない安全面への配慮。これは社内イチで、僕も尊敬してるんですよ。まあ、ご両親があんなことになったらそうなりますよね……』  その真相を、知りたい。  壱月のご両親の死は、私との再会のすぐ後だったと、前に聞いたから。  もしそれに、飛行機が絡んでいるのなら。 「ねえ、壱月……」 「何?」 「……ご両親のこと、聞いてもいい?」  私と会えなくなるほどの、何か。  私と連絡を絶ってしまったほどの、何か。  それは、何だったのか、知りたい。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4770人が本棚に入れています
本棚に追加