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最後だけ、悲しい顔のまま笑った壱月。
その顔に胸がキュウっとなって、私は思わず顔を伏せた。
壱月のパイロットとしての想い。
副機長としての、責任。
空への憧れと、恐怖。
色々な事が頭に雪崩れ込んできて、ぐちゃぐちゃになっていく。
私が花斗を身籠ったあの時、壱月は壱月で、精一杯生きてたんだ。
そして、それは今も。
「ま、そんなこんなで大事なもん手放してんだから、しょーもないよな。本当……情けない。ごめん」
「ううん。……私も、ごめん」
自分のことばかりでごめん。
自分だけ可愛くてごめん。
自分だけ可哀想でごめん。
私だけじゃなかった。
苦しかったんだ、壱月も。
「それは、何に対して? 愛音は、悪いことしてねーだろ」
「うん……、そうだね」
顔をあげると、壱月はこちらを見ないまま私の髪をくしゃっと撫でる。
だから私も、大空から帰ってきたばかりの目の前の飛行機に、視線を移した。
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