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14 母になった女、女になった母
ファミリーフェスタから帰宅し、今はもう寝る前だ。
風呂上がりに恒例のように大窓にべったりくっついた花斗を尻目に、私はスマホをチェックしていた。
[同期飲み、今回は参加できますか?]
壮馬から、そうメッセージが届いていた。
この飲み会は、定期的に開かれている近隣店舗および本社の同期の飲み会だ。
私は花斗がいるから遅くまでいられないということもあり、参加しないのが定例だが。
「行くのか?」
いつの間にか背後にいたらしい壱月に声をかけられ、ピクリと肩が動いた。
「悪い、画面見えた」
どうやら後ろからチラリと画面を覗き込んだ壱月の目に“飲み会”の文字が見えたらしい。
「まっさか~」
振り向き笑顔で答えると、思いの外真面目な顔で「どうして?」と返された。
「花斗がいるからね。仕事復帰しても、こればっかりは仕方ないよね」
無理矢理作った笑顔を壱月に向けた。
――仕方ない。
母親になる決意をしたあの日、どうしても切り捨てなきゃいけないことのひとつに、人付き合いがあった。
花斗優先の毎日。
でも、親だから仕方ない。
それに、同期との飲み会にいけないくらい、なんでもない。
職場には優秀(?)な水瀬がいるし、スタッフたちもいる。
私は一人じゃないし、仲間がいるから。
「そう……これ、いつ?」
壱月は自分のスマホを操作しながら聞いてきた。
「三日後。毎月恒例なんだよね~、ま、壮馬もとりあえず連絡くれてるだけで、私が来るなんて思ってないみたいだけど」
ふふっと自嘲気味に笑っていると、壱月に「壮馬って誰?」と聞かれて「一番仲いい同期」と答えた。
壱月は「ふ~ん」と言いながら、顎を触ってしばらく考え込んだ後、言った。
「行けば?」
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