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それから三日が過ぎた。
壱月がブリスベンから帰ってくるだけでなく、保育園のお迎えにも来てくれるということで、花斗は朝から超絶ご機嫌だった。
朝、登園時に壱月がお迎えにくる旨を姉に伝え、私は今日の仕事を一日中ソワソワしながら終えた。
「あれ、店長。いつもは終業後ダッシュで帰るのに」
引き継ぎを終えた水瀬が、休憩室の椅子に座ったままの私に声をかけてくる。
いつもは参加しないから、居酒屋の場所がわからないと壮馬に伝えると、店まで迎えに行くと連絡があったのだ。
「ダッシュしてるつもりはないんだけど」
「そうなんですか? でも、いつも必死の形相ですよ?」
ああ、そうなんだと思いながら、いつもの様子を思い浮かべて苦笑いを浮かべた。
言われてみれば、ダッシュしているかもしれない。
すると今度は、壱月は花斗のお迎え行ったかな、なんて急に不安になってくる。
「今日はこの後予定があるんだ」
落ち着かない気持ちを誤魔化すようにそう告げると、「へえ、珍しい〜」なんて言いながら、水瀬が売り場へ出ていく。
それとほぼ同時に、休憩室の扉がノックされた。
「お待たせ、大木本さん」
「あ、いや、別に……」
笑顔で現れた壮馬に、違う意味でソワソワしだす。
同期での飲み会なんて久しぶりだ。
壮馬以外の同期に会うのだって、花斗が生まれてからはそんなにない。
「ははっ、緊張してる」
「してない!」
思わず言い返すと、「ごめんごめん」と笑いながら、壮馬に連れられ店舗を出た。
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