2 言うべきか、言わざるべきか

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 昼前11時。  店頭にやってきた壮馬を見てふう、と息を吐き出した。  彼は私と目が合うと苦笑いを浮かべる。  噂が噂だけに、何度会ってもこうなってしまう。 「大木本店長、昼、一緒にどう?」  12時を回り、午後勤務の社員へ午前中の業務を引き継ぎを終えると、自身の仕事を終えたらしい壮馬に声をかけられた。  “店長は店に来た本部の人間と共に昼を過ごさなければならない”というこの会社の風潮はどうにかならないものか。  おかげで、私と壮馬は、他の従業員からの生暖かい視線を浴びながらランチに出なければならなくなる。 「じゃ、行きますか」  私はため息をついてから、苦笑いを浮かべて休憩室を出ていく壮馬を追った。  従業員通路から外に出て、大きく伸びをする。 「んーー!」 「いい天気だね、ちょっと暑い」  隣で壮馬が笑った。 「本当、雲一つない」  話始めれば元恋人といえども、私と彼の間に気まずさなんて無い。  そもそも、付き合っていたのもほんの数ヶ月だ。 「あ、飛行機雲!」  いつも行くカフェに向かう途中に、壮馬が息子みたいなことを言うからつい見てしまった。  そして、思い出した。 「あーーーー!」
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