2 言うべきか、言わざるべきか

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「どうしたの、愛音(あいね)?」  飛行機から連想された、パイロットのアイツ(壱月)の顔。  昨日、彼にもらったアレを不意に思い出したのだ。 「あー、いや、何でもない」  慌てて取り繕ったけれど、そんな誤魔化しはきかないらしい。 「力になれることなら協力するって、愛音がシングルマザーになるって決めたときに言ったろ? 隠し事、なし」 「え、でも……」  仮にも、元カレである彼に、言っても良いのだろうか。“息子の父親に再会した”ということを。  私は黙って視線を彷徨わせた。 「あー……」  壮馬は頭をくしゃっと掻いた。 「でも、あんまり詮索しない方がいっか。プライベートなこともあるもんな、うん、そうだ」  急に一人で納得し始める壮馬を見ていたら、何だか笑えてきてしまう。 「やっぱ話そっかな。聞いてくれる?」 「そ。それでこそ愛音。図々しいのが愛音」  壮馬は「ははっ」と笑った。
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