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カフェでご飯を食べ終わると、私は壱月と再会したことをかいつまんで壮馬に話した。
「花斗くんの父親に会ったんだ」
「うん」
「で、連絡先も知っている、と」
「うん」
「で、愛音は何から話せばいいか解らない、と」
「え! なんで分かったの!?」
そこまでは伝えていないのに、さらっと心の内を読んだ壮馬。
思わず食後のコーヒーを溢してしまいそうになった。
「そりゃあ、伊達に愛音の元カレしてないですから」
「何それ」
「たった数ヶ月でも、恋人は恋人ですからね」
壮馬は「へへっ」とはにかんだ。
でも、違う。
恋人だったからじゃない。
私たちは、似すぎているからだ。
だから、別れたのに。
私は彼に曖昧な笑顔を返した。
すると、壮馬は思わぬ提案をしてくる。
「とりあえず、会っちゃえば?」
「はぁ!?」
素っ頓狂な声が出た。カフェの中に声が響いて、慌てて肩を縮めた。
「話すことなんて、会ってから決めたらいいよ。会っちゃえば、必然的に話さなきゃいけない状態になるんだからさ」
「そうだけど……」
すでに怯みかけている私の声に、声を被せて壮馬は続けた。
「それで、沸いてくる感情のままに話せばいいよ。どうして欲しかったのか。どうして欲しいのか。決められないときは、それが一番いい」
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