2 言うべきか、言わざるべきか

5/11
前へ
/195ページ
次へ
 カフェでご飯を食べ終わると、私は壱月と再会したことをかいつまんで壮馬に話した。 「花斗くんの父親に会ったんだ」 「うん」 「で、連絡先も知っている、と」 「うん」 「で、愛音は何から話せばいいか解らない、と」 「え! なんで分かったの!?」  そこまでは伝えていないのに、さらっと心の内を読んだ壮馬。  思わず食後のコーヒーを溢してしまいそうになった。 「そりゃあ、伊達に愛音の元カレしてないですから」 「何それ」 「たった数ヶ月でも、恋人は恋人ですからね」  壮馬は「へへっ」とはにかんだ。  でも、違う。  恋人だったからじゃない。  私たちは、似すぎているからだ。  だから、別れたのに。  私は彼に曖昧な笑顔を返した。  すると、壮馬は思わぬ提案をしてくる。 「とりあえず、会っちゃえば?」 「はぁ!?」  素っ頓狂な声が出た。カフェの中に声が響いて、慌てて肩を縮めた。 「話すことなんて、会ってから決めたらいいよ。会っちゃえば、必然的に話さなきゃいけない状態になるんだからさ」 「そうだけど……」  すでに怯みかけている私の声に、声を被せて壮馬は続けた。 「それで、沸いてくる感情のままに話せばいいよ。どうして欲しかったのか。どうして欲しいのか。決められないときは、それが一番いい」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4772人が本棚に入れています
本棚に追加