2 言うべきか、言わざるべきか

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「でも……」 「じゃあ愛音は彼にどうして欲しいのさ?」  壮馬が私の心まで覗くように、私の瞳を覗き込んだ。  そう言われると言葉が続かない。  実際、どうして欲しいのか迷っているからこうなったのだ。  彼の子供であることを告げて、養育費を払えと申し出たいのか。  怒りたかったのか。当たりたかったのか。  だったら昨日の時点で怒り狂っていたんじゃないか……。 「分かんない」 「だよな」  壮馬はなぜか安心したように笑った。 「だから、会って話せばいいの。ほら、今いつ会うか決めちゃいなよ」 「え!?」 「そうしないと愛音、いつまでも先伸ばしにしちゃいそうだから。愛音、仕事中はきちんとしてるのに、私生活ズボラだろ?」  ヘラヘラ笑う壮馬に急かされて、スマホを手に取った。  そして、手帳の間に挟んでおいた、あのメモ紙を広げる。  意を決し、壱月の番号を入力して、メッセージを送った。  すると、すぐに返信がくる。 「彼、何だって?」  壮馬は画面は覗かずに、私に聞いてきた。 「今夜どうかって。明日からは3日間フライトでロサンゼルスって……」 「なら、今夜会っちゃえって。ほら、早く返信!」 「はい……」  急かされて、今夜会う約束を取り付けてしまった。 「それにしても、フライトって……しょっちゅう海外行く仕事なんだ?」 「うん、パイロット」 「へえ、パイロット、かあ」  壮馬はなぜだか寂しそうな顔をして、カフェの窓の外に広がる空を見上げていた。
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