2 言うべきか、言わざるべきか

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 羽田空港第2ビル、スカイラウンジ。  そこは、空港関係者しか入れない特別なラウンジだそう。 「ママ! すごい! 飛行機、目の前!」  空港で待ちあわせた壱月(いつき)とともに足を踏み入れたここは、壁一面が全面ガラス張りの窓で、ちょうど着陸後の飛行機が止まっているのが目の前に見える。  窓際の4人がけのソファ席に案内されるやいなや、花斗(はなと)は窓ガラスに鼻先をくっつけて外を覗いていた。 「タラップ車もトーイングカーも見えるよ! あ、あれは何?」 「花斗、静かにしなさい! ……なんかごめん、壱月」  終業後、急なことだったので姉に花斗を預けられず、保育園に迎えに行ってから空港に直行した。  それだけでもテンションだだ上がりの所に、服装こそスーツだが前に会ったパイロットが目の前にいて、さらにこのスペシャルなラウンジである。  大人しくしていろ、という方が無理か。 「全然構わない。坊主、どの車だ?」 「あー、あれ! ういーんって後ろがあがってるやつ!」 「あれはケータリングカー。飛行機の中で食べるご飯とか、飲み物とかを運ぶ車だ」 「へえ~」  テーブルを挟んではいるものの、共に窓の外を眺める姿になんとなく“親子”を感じる。  その事実に、なんとなく胸がもやもやしてくる。  離れていても、親なのか。  知らなくても、親なのか。  私は、一人でこの子をここまで育ててきたのに。
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