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羽田空港第2ビル、スカイラウンジ。
そこは、空港関係者しか入れない特別なラウンジだそう。
「ママ! すごい! 飛行機、目の前!」
空港で待ちあわせた壱月とともに足を踏み入れたここは、壁一面が全面ガラス張りの窓で、ちょうど着陸後の飛行機が止まっているのが目の前に見える。
窓際の4人がけのソファ席に案内されるやいなや、花斗は窓ガラスに鼻先をくっつけて外を覗いていた。
「タラップ車もトーイングカーも見えるよ! あ、あれは何?」
「花斗、静かにしなさい! ……なんかごめん、壱月」
終業後、急なことだったので姉に花斗を預けられず、保育園に迎えに行ってから空港に直行した。
それだけでもテンションだだ上がりの所に、服装こそスーツだが前に会ったパイロットが目の前にいて、さらにこのスペシャルなラウンジである。
大人しくしていろ、という方が無理か。
「全然構わない。坊主、どの車だ?」
「あー、あれ! ういーんって後ろがあがってるやつ!」
「あれはケータリングカー。飛行機の中で食べるご飯とか、飲み物とかを運ぶ車だ」
「へえ~」
テーブルを挟んではいるものの、共に窓の外を眺める姿になんとなく“親子”を感じる。
その事実に、なんとなく胸がもやもやしてくる。
離れていても、親なのか。
知らなくても、親なのか。
私は、一人でこの子をここまで育ててきたのに。
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