4771人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、話したいことって?」
ハンバーグを食べ終えた頃、壱月が急に話を切り出す。
花斗は窓の外の飛行機が動き出したと、またそちらに夢中になっていた。
「あー……」
何をどう伝えるべきか。
壮馬に『会ってみろ』とか言われたから、勢いで来てしまったけれど、私の心は決まっていない。
よし、ここは当たり障りのない話作戦だ。
「姉がさ、結婚するんだよね」
「へえ」
だから何だって話だ。壱月の相づちも、適当じゃないか。
そんな自分にイライラしていると、急に横から花斗の声が飛んできて、思わずピクリと肩を揺らした。
「ママー、次のお家、いつ見に行くの?」
「お家?」
壱月が聞き返すと、花斗は得意気に知っていることを話し出す。
「ママと僕ね、先生と一緒にすんでるの。先生、ケッコンするの。僕とママ、お家無くなっちゃうから、新しいお家さがしてる……だよね?」
急に自信を無くしたのか、花斗は疑問系の語尾をこちらに投げかける。
「あー、えっと、そうだね。あ、先生ってのは私の姉のこと。保育園の先生なの」
花斗のカタコトの日本語を通訳しながら、住む場所がなくなることをかいつまんで壱月に話した。
「ああ、なるほど、そういうこと……」
壱月は顎に指をあてしばらく考え込む。
それから、ふっと息を吐き出して、こちらをじっと見つめた。
「住むとこないなら、うち来れば?」
最初のコメントを投稿しよう!