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畏れ多くも、その室内に一歩踏み入れる。
反応した玄関灯がピカッと入り口を照らして、それから部屋内の照明を順に灯していく。
「わぁ、飛行機! ママ、飛行機!」
花斗がぴょんぴょんと器用に私の抱っこの中で跳ねる。
花斗の指の先を辿ると、飛行機の模型が飾られていた。
もちろん、花斗の持っているおもちゃのような物ではなく、本格的な仕様だ(多分)。
「これは、ボーイング747SRの100、別名スーパージャンボ。『ジャンボ』って愛称で親しまれてたんだけど……知らねーか。もう今は飛んでないんだけどな。……あ、触るなよ?」
「はーい」
壱月の上機嫌な解説にお行儀よく返事をした花斗。
その頭を「偉い偉い」と撫でながら、壱月は先に部屋に上がり、リビングに続く戸を開けて待っている。
「どーぞ」
その声に、私も部屋に上がらせてもらおうと、靴を脱ぐために身を屈めた。
すると、花斗は私の抱っこからするりと降りて、さっと靴を脱ぎ捨てる。
「あ、こら、花斗!」
言うも虚しく、花斗は壱月の脇をも通り抜ける。
そのままリビングらしいその部屋の中をたったと突っ切って、その先にある窓にへばりついた。
壁一面がガラスになっている窓だ。
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