4770人が本棚に入れています
本棚に追加
「パイロットのお兄ちゃん、」
不意に花斗が振り返った。
「ここで毎日飛行機見てたら、僕もパイロットになれるかな?」
壱月は花斗のキラキラした視線に応えるように、爽やかな笑みを浮かべた。
「おおー、きっとなれるぞ!」
すると、壱月を見ていたその小さな二つの瞳が、ギロリとこちらに向けられる。
嫌な予感しかしない。
「ママ、新しいおうち、ここ!」
はぁぁぁ~、やっぱり!
落胆の叫びを心の中で上げながら、深いため息をつく。
「ぜったいここ! ぜったいぜったいにここ!」
「あー、うん、考えておくね」
苦笑いを浮かべながら、便利な日本語を並べて返すと、壱月は「ごめん」と小声で謝ってきた。
それから、空いているという部屋や他の部屋も一通り見せてもらう。
「もっとここにいたい!」と暴れる花斗を引っ張りながら、二軒隣の我が家に帰宅した。
帰り際、壱月は「いつでも連絡して。フライト以外の時ならすぐ返す」と付け加えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!