3 二軒隣のタワーマンション

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「で、話って? ま、だいたい察しはつくけど」  注文した品が運ばれてきて、それを食べ始めたことでやっと花斗が大人しくなった隙をついて、壮馬が切り出す。 「この間話した、彼のことで……」 「だろうなって、思った。パイロットの彼ね」  壮馬は苦笑いを浮かべる。すると、壮馬の『パイロット』の声に反応した花斗が、テーブルに身を乗り出した。 「パイロットさん、かっこいいんだよ!」 「ちょっと、静かに食べなさい!」 「えー」 「まあまあ、今日くらいいいじゃない」  壮馬は笑いながら、花斗の視線を受け止めていた。 「それでね、引っ越すの!」 「は?」  脈絡のない『それでね』に、壮馬も戸惑いを見せる。そして、その次の花斗の言葉に、私は頭を抱えた。 「飛行機の見える、空のおうちだよ! パイロットのお兄ちゃんが住んでるの!」  一瞬、私たちに沈黙が訪れた。 「……はぁ!?」  三テンポくらい置いて、相馬の驚きの声。その目は大きく見開かれている。  ですよねですよね、そういう反応ですよね……。  私は口をぽかんと開けたままの壮馬に、そうなった斯々然々を話した。  壱月の家にお邪魔したこと、花斗がそこに住みたがっていること――。  お腹いっぱいになったらしい花斗は、私の話の途中でソファ席に横になって寝てしまった。 「へえ。……で、引っ越すの? 本当に、彼の部屋に」 「悩んでる」 「ふーん」  そんな会話にため息をこぼした私は、隣で眠る花斗の髪を撫でた。どことなく壱月の面影の残る鼻筋だなと思ってしまい、苦い笑みがこぼれた。
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