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「で、話って? ま、だいたい察しはつくけど」
注文した品が運ばれてきて、それを食べ始めたことでやっと花斗が大人しくなった隙をついて、壮馬が切り出す。
「この間話した、彼のことで……」
「だろうなって、思った。パイロットの彼ね」
壮馬は苦笑いを浮かべる。すると、壮馬の『パイロット』の声に反応した花斗が、テーブルに身を乗り出した。
「パイロットさん、かっこいいんだよ!」
「ちょっと、静かに食べなさい!」
「えー」
「まあまあ、今日くらいいいじゃない」
壮馬は笑いながら、花斗の視線を受け止めていた。
「それでね、引っ越すの!」
「は?」
脈絡のない『それでね』に、壮馬も戸惑いを見せる。そして、その次の花斗の言葉に、私は頭を抱えた。
「飛行機の見える、空のおうちだよ! パイロットのお兄ちゃんが住んでるの!」
一瞬、私たちに沈黙が訪れた。
「……はぁ!?」
三テンポくらい置いて、相馬の驚きの声。その目は大きく見開かれている。
ですよねですよね、そういう反応ですよね……。
私は口をぽかんと開けたままの壮馬に、そうなった斯々然々を話した。
壱月の家にお邪魔したこと、花斗がそこに住みたがっていること――。
お腹いっぱいになったらしい花斗は、私の話の途中でソファ席に横になって寝てしまった。
「へえ。……で、引っ越すの? 本当に、彼の部屋に」
「悩んでる」
「ふーん」
そんな会話にため息をこぼした私は、隣で眠る花斗の髪を撫でた。どことなく壱月の面影の残る鼻筋だなと思ってしまい、苦い笑みがこぼれた。
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