3 二軒隣のタワーマンション

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 今日は壱月宅への引越の日。  住んでいた家と新居との距離はたった二軒分。  ちょこまかと荷物を運ぶこと三往復、あっという間にその運び込みが終わる。  事情を知った姉も手伝いを申し出てくれたが、恋人、もとい婚約者の榎田さんとのデートという先約があったため丁寧にお断りした。 「ほんっとうに、これだけ?」 「うん、これだけ」  壱月が驚くように最後の荷物を抱えている。  私も荷物を抱え、部屋を出た。  もともと、着の身着のまま実家を追い出されたような私は、特に大きな買い物もしなかったため、持っている荷物は少ない。  増えたものといえば、ほぼ全部花斗のもので、それも服やおもちゃのみだ。 「ベッドとか、ソファとか、ねーの?」  マンションのエレベーターの中で、壱月が額の汗を拭いながら言う。 「ない。もともとお姉の部屋だから、家具はお姉のだし、あるものといえば布団くらい」 「部屋、フローリングだぞ?」 「今までもそうだったし」 「……そうかよ」  壱月はポリポリと頭を掻いて、部屋に入れた荷物を空き部屋へと運んだ。  そこは、広すぎるリビングの東側で、壱月の寝室の隣。  ここが、今日から私と花斗の部屋になるらしい。
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