3 二軒隣のタワーマンション

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「花斗、そろそろお手伝いしてくれない~?」 「はーい」  運び込みの間は、リビングの奥の大窓にへばりついて空港を眺めていた花斗が、こちらにタッタと駆けてくる。 「お、偉いな、花斗!」  壱月に頭を撫でられて、花斗の両頬にえくぼができた。 「僕、おもちゃしまう!」 「はい、よろしくお願いします」 「じゃ、俺夕飯作る!」 「え!?」  花斗と同じようなテンションで宣言した壱月を、思わず二度見した。 「……作っちゃ悪いか?」 「いや、そんなことないけど……」 「花斗、食えないものとかある?」 「ない! ぼく、何でも食べれるよ」 「おー、偉い偉い!」  私は呆然としながら、キッチンへ向かう壱月の背中を目で追う。 「ほら、ママ、早く!」  花斗に手を引かれ、慌てて部屋の方へ向き直る。 「じゃあ、部屋に行きましょう」 「はーい!」  花斗はスキップもどきをしながら、今日から私と花斗の部屋になったそこへ、ルンルンと吸い込まれていく。  私も片付けを頑張ろうと両頬をペチペチ叩いて気合いを入れた。  ──こうして、私と花斗と、花斗の父親である壱月との同居生活が幕を開けたのだった。
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