4770人が本棚に入れています
本棚に追加
「花斗、そろそろお手伝いしてくれない~?」
「はーい」
運び込みの間は、リビングの奥の大窓にへばりついて空港を眺めていた花斗が、こちらにタッタと駆けてくる。
「お、偉いな、花斗!」
壱月に頭を撫でられて、花斗の両頬にえくぼができた。
「僕、おもちゃしまう!」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃ、俺夕飯作る!」
「え!?」
花斗と同じようなテンションで宣言した壱月を、思わず二度見した。
「……作っちゃ悪いか?」
「いや、そんなことないけど……」
「花斗、食えないものとかある?」
「ない! ぼく、何でも食べれるよ」
「おー、偉い偉い!」
私は呆然としながら、キッチンへ向かう壱月の背中を目で追う。
「ほら、ママ、早く!」
花斗に手を引かれ、慌てて部屋の方へ向き直る。
「じゃあ、部屋に行きましょう」
「はーい!」
花斗はスキップもどきをしながら、今日から私と花斗の部屋になったそこへ、ルンルンと吸い込まれていく。
私も片付けを頑張ろうと両頬をペチペチ叩いて気合いを入れた。
──こうして、私と花斗と、花斗の父親である壱月との同居生活が幕を開けたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!