4 唐揚げ、時々、イヤイヤ

2/9
前へ
/195ページ
次へ
「これ、全部壱月が作ったの!?」  ダイニングテーブルの上に並べられたお皿の上には、レタスとミニトマトが添えられた唐揚げたち。  それも、微妙に色が違うのが三種類。  それから、ほくほくなポテトサラダ。  隣のガラスの容器に入っているのは、イカのマリネだろうか。 「そ。これはにんにく醤油、こっちは塩麹。あと、赤唐辛子。これは大人向けな」 「へぇ〜」  壱月は得意気に指を差しながら唐揚げの説明をする。  思わずテーブルの上に釘付けになっていると、隣で花斗がぴょんぴょんととび跳ねていた。 「ママ、見えない!」  なるほど、今までローテーブルだったからあまり意識してこなったけれど、花斗にはダイニングテーブルは高いらしい。 「花斗、ほら」  壱月が花斗を後ろからひょいっと両脇を抱えて持ち上げる。  すると、「ほぉーー」という歓声が花斗から漏れた。 「唐揚げ! 唐揚げ!」 「唐揚げ、好きか?」  壱月が後ろから花斗の顔を覗く。 「うん! こーんくらい好き!」  花斗はめいっぱい両手を広げて、その大きさを表現した。 「ははっ、そうかそうか」  壱月は本当に嬉しそうに目尻を下げて、花斗を床に下ろした。 「今取り分けてやるからな」  そう言って壱月はメラミンのお皿に唐揚げを乗せていく。 「ありがと、壱月」 「おう!」  壱月はその爽やかな笑顔を私にまで向けるから、思わず胸がまたドクンと高鳴った。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4770人が本棚に入れています
本棚に追加