4 唐揚げ、時々、イヤイヤ

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 壱月はご飯と味噌汁を盛り付けてテーブルに運ぶ。  ほかほかと湯気の上がるそれからは、お出汁のいい香りがする。  壱月は、料理上手らしい。  料理下手な私はこの三年間、四苦八苦しながらも花斗の為に手料理を作り続けてきたのに。  なんだか惨めな気持ちになって、思わず顔を歪めた。 「愛音?」  不意に目の前に壱月の顔が現れて、私は慌ててブンブンと横に顔を振った。 「何でもない! ……あれ、花斗は?」 「あそこ」  壱月が指を差した方を見れば、「唐揚げ~唐揚げ~」と謎の歌を歌いながら踊るアホ丸出しの二歳児の姿。 「花斗、夕飯いただくよ!」 「わーい!」  素直にこちらに走ってきた花斗は、突然ピタッと立ち止まる。  すると、顔をしかめて私の足元にペタッとくっついた。 「ママ、このお椅子、ヤダ」  「……は?」と言ったのは、四人掛けのダイニングテーブルの、キッチン側に座る壱月だった。  私は壱月の前に座ろうとしたところである。 「花斗は、私の隣でいいでしょ?」  壱月もそのつもりだったのだろう。  私の隣の席に、花斗の食器をセットしておいてくれている。 「ヤダ。じゃあ、だっこして」 「だっこじゃ、ママ食べれない」 「俺の隣来るか?」 「ヤダ!」  壱月の提案の返答に花斗が一番大きな声を出したからか、壱月は目を見開く。  育児初心者には、これはダメージが大きいだろう。
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