4 唐揚げ、時々、イヤイヤ

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「いつき、はいどうぞ」  花斗が、自分の使った食器を彼の元へ運んでいる。  先に夕飯を食べ終わった壱月がキッチンで食後のコーヒーを淹れていた。  食べ終わった食器は自分でシンクへ運ぶ、というのは私が花斗に教えたルールだ。  壱月宅でも律儀にルールを実行した花斗は、偉い。  私はそっと花斗の後ろからキッチンを覗く。  息子の成長にニマニマしてしまうけれど、壱月がいるのは気まずい。 「サンキュ、花斗」  花斗に気づいた壱月が、急に爽やかな笑みを浮かべる。  そしてお皿を受け取ると、花斗に聞いた。 「美味かったか?」 「うん! 唐揚げって、おうちで作れるんだね!」  その花斗の一言に、後ろにいた私はさっとキッチンの向こうの壁に隠れた。  あのことは言うなよ、言うなよ、恥ずかしい……。 「ママはね、唐揚げはスーパーで買うの」  あーあ、言っちゃった。  ちらっとキッチンを覗く。  すると、壱月と目があって、私は慌ててまた壁の向こうに隠れた。 「そうか、美味いって思ってくれて、俺は嬉しいぞ」  壱月は花斗に視線を戻すと、大きな手で花斗の髪をくしゃりと撫でた。  花斗の頬が、満足そうに紅に染まった。
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