4 唐揚げ、時々、イヤイヤ

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「あー……あとさ、愛音」  壱月はコーヒーの入ったマグカップを、壁の向こうの私にぶっきらぼうに差し出した。 「さっきはごめん。言い過ぎた」 「……私も、ごめん。なんか、焦っちゃって」 「うん」  壱月はそう短く言って、こちらの見えるところまで来ると、立ったままコーヒーを一口飲んだ。 「でも、これからあーゆうことあっても、別にいいから。俺、気にしないし。ガキがいると、よくあんだろ? 俺の姪っ子もさ、よくこぼすんだよ。だから」 「そっか……」  壱月には姪っ子がいるのか。  どうりで、子供の対応の仕方が慣れているはずだ。 「俺も気を付けるし、この家では自由にしてもらって構わない。愛音も、いちいち気遣うの大変だろうし」 「うん……私もごめんね。なんか、意地になっちゃった」 「おう……」  私も立ったままコーヒーに口をつけた。心なしか、優しい味がする。 「ママ、いつき、仲良し?」  間にいた花斗が、私たちの顔を交互に見上げる。  顔をあげれば、眉をハの字に曲げた壱月と目が合った。  きっと、私も同じような顔をしているに違いない。
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