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その後、お風呂をいただきリビングに戻ると、花斗はまっすぐに大窓に向かった。
窓の向こうの、羽田空港を見るために。
「お風呂ありがとう、先に入っちゃってごめんね?」
「いいって」
皿洗いをしていたらしい壱月は、きゅっとシンクの水を止めるとエプロンを外してリビングへやって来た。
「俺はゆ~っくり浸かりたいから。いつも、後で結構」
「うん、わかった」
とは言ったものの、いつもより広い浴槽にテンションの上がった花斗のせいで、こちらも結構長い時間入っていたような気がする。
「花斗、もう寝るよ?」
声をかけるも、窓に張り付いた花斗はピクリともしない。
「ほら、花斗。明日は保育園」
「んー……」
ようやく反応を示したものの、その体は動かない。
「ママもお仕事だから、寝たいな~」
「うん……」
その様子に、壱月は腕を組んで笑っている。
「もう! 寝るよ、花斗!」
私はしびれを切らして、花斗の両脇を抱えて窓から引き剥がそうとした。
しかし、花斗の猛抵抗は二歳児とは思えない力を発揮する。
「やだ! まだ寝たくない!」
私の手を振りほどき、窓辺に戻る花斗。
「じゃあ、あと十秒ね。いーち、にーい、……、じゅーう、はい寝よう!」
「やだ!」
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