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思わずため息が漏れた。
寝るのが遅くなれば、明日の朝の不機嫌モードがレベルアップするのは目に見えている。
そうなれば、私の不機嫌モードもレベルアップしてしまう。
「寝ーるーよ」
「やーだ」
「じゃあ、ママ先寝るよ?」
「だめ、ここにいて」
「ここじゃ寝れないよ」
「じゃあ寝ないで」
「えー」
「やーだ……やーだ、やーだ!」
現れてしまったヤダヤダ星人にイライラゲージが振り切れそうになった刹那。
「……っ!?」
口から心臓が飛び出そうになった。
壱月が、私の腰を突然抱き寄せたのだ。
耳元で壱月がふっと笑う声が聞こえる。
先ほどまでと違うゲージが振り切れそうになったその瞬間、壱月は花斗の名を呼んだ。
「はーなと。花斗がママと寝ないなら、俺がママと寝ちゃうからな~」
その声にはっと振り返った花斗。
こちらの状況を察したのか、慌ててちょこちょこ駆け寄ってくる。
「ダメ!」
花斗は必死に、私と壱月をひっぺがそうとする。
「子供って案外チョロいな」
壱月は私の耳元でそう言ってから、クスクス笑って離れていった。
はぁ~~~~っ!?
壱月の発言が信じられない。
思わず彼を睨んだ。
――今まで、私がどれだけ……。
しかし、そのまま花斗に手を引かれて寝室に入ってしまったから、彼がどんな顔をしていたのかは分からなかった。
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